サブスクリプション

ビジネス

『サブスクリプション』ティエン・ツォ

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内容

サブスクリプション・モデル

これからのビジネスの目標は、まず特定の顧客のウォンツ(欲求)とニーズ(必要)に着目し、そこに向けて継続的な価値をもたらすサービスを創造すること。

 

デジタルの世界で、何十億という消費者の関心が所有から利用へと加速度的に移行しており、サブスクリプション・エコノミーが爆発的に拡大している。

 

四半期ごとに売上ゼロからスタートして、目標の収益額に達するまで匍匐前進を繰り返していた。

だが、サブスクリプション・モデルはそれとは異なる。

収益の80%をサブスクリプションで得ている1000万ドル企業であれば、常に800万ドルの売上が約束された状態で新年度をスタートすることができるのだ。

株価が将来を見越した価値評価だとすれば、サブスクリプションは将来を見通す収益モデルである。

 

このモデルで事業展開している会社は、S&P500社の9倍の速さで収益を伸ばしていることがわかった。

 

顧客について多く知る企業ほど、顧客のニーズを満たすことができ、価値のある関係を顧客と結ぶことができる。

これがデジタル・トランスフォーメーションだ。

 

あなたの会社が今後5年、見知らぬ人に製品を売る商売を続けるとしたら、10年後にも会社が存続している可能性は低いと言わなくてはならない。

今日、あらゆる消費者ブランドに絶対に必要なのは、顧客を知るということだ。

 

サブスクリプション・ビジネスを長く続けたいなら、特に顧客の不満が光速で拡散する時代においては、黄金律に従わなくてはならない。

すなわち、やめたいと思っている顧客が簡単にやめられるようにするべきだ。

もちろん、なぜやめるのかをたずねるのはよいし、再契約を試みるのもよいが、やめるのを邪魔してはいけない。

 

小売業

実はEコマースはそんなに速く拡大しない。

全米の小売売上高の85%以上は、いまもリアル店舗で発生しており、5兆ドルを超えている。

しかも、それはまだ増加しているのだ。

今後4年で、世界の小売部門は売上高にして5兆ドル成長し、28兆ドルに達する見込みだが、増加する5兆ドルのほとんどは物理的な店舗で実現するとみられている。

 

小売業が死んだというのは間違いだ。

小売総売上の85~95%がリアル店舗からもたらされている。

死んだのはお粗末なリアル店舗だ。

 

多くの人はまずオンラインで商品を物色し、それからリアル店舗に行って、実際の商品を確認してから買っていた。

店舗を、在庫管理のためではなく、カスタマー・インサイトを獲得するために利用している。

 

特に食品や雑貨のような分野では、迅速なピックアップと配達は、ビジネスを行うための参加料のようなものだ。

 

サービス化

製品に魅力的なデジタルサービスをセットにして提供すればよい。

彼らはギター初心者が最初のリフや曲を30分程度でマスターできるよう指導する、フェンダー・プレイという定額利用のオンライン教育動画サービスを開始した。

 

製品が提供するサービスのレベルについて契約すればよい。

サービスレベル契約が製品ごとの請求書に取って代わりつつある。

コネクティビティが製品をサービスに変え、それによって企業は製品ではなく結果を売ることができるようになる。

 

業界事例

出版業界

切れのよい新しいコンテンツに投資することは、

  1. 新しい加入者を獲得し、
  2. 現在の加入者の契約を継続させるのに役立つ

しかも、その番組はいつまでもコンテンツ・リストにあり続けるのだ!

以上があいまって、同社のポートフォリオ全体の価値は高まる。

 

広告売上の比率を下げて、広告を第2の収益源、それでも重要であることは確かだが、にすることは、ほとんどのニュース・パブリッシャーにとって最も重要な戦略目標だ。

高品質のコンテンツとすぐれたデジタル製品の裏付けがあれば、購買料売上は広告料売上よりはるかに安定している。

 

読者のエンゲージメントを測定する単純だが気の利いた方法

  • リーセンシー(最後に訪問したのはいつか)
  • フリークエンシー(訪問頻度)
  • ボリューム(読んだ記事数)

低スコアの購読者にはチャーン(解約・離脱)のリスクがあるので、販売促進部門がディスカント・オファーなどの働きかけをすることになる。

 

グーグルやフェイスブックと1ドルの広告料を奪い合う椅子取りゲームをしているのがデジタル・ジャーナリズムのベンチャー企業だ。

勝負はスケールではなく、有料購読者のエンゲージメントだ。

そのことを認識できれば、企業として何をすればよいかが明確になり、これまで決断を妨げていた思い込みからも自由になれる。

企業はすべての顧客にすべてを提供しなくてもかまわない。

自社の読者を知り、彼らにとって最善を提供すればよいのである。

 

映像業界

ネットフリックスがユーザー情報を熱心に収集していることは誰もが知っている。

同社は毎日、数百万、数千万のユーザーのタッチポイントを観察している。

ユーザー評価レーティング、検索行動、居住地情報、視聴時間、利用デバイス情報、SNSへのフィードバックなどは当然として、番組のどこで一時停止ボタンを押したか、巻き戻したか、早送りしたかなどもそこに含まれる。

そのプログラムを観る前に何を観たか、観た後で次に何を観たか、5分で観るのをやめたプログラムは何か、といったこともわかっている。

また、提供するすべてのプログラムに、暴力レベル、物語の舞台、時代設定、登場人物までの職業までを指定した100を超えるタグが付けられている。

 

サブスクリプション・サービスにおいては、必要なすべてのインサイトが自社のシステムの中に存在している。

 

今後、ニッチな世界で無数のネットフリックスが花開くことだろう。

 

音楽業界

音楽産業は、同時に進行する3つの移行をコントロールしようとしている。

  1. 有形物からデジタルへ
  2. PCからモバイルへ
  3. ダウンロードからストリーミングへ

「音楽は水道や電気のようになるだろう」デヴィッド・ボウイ

 

多くの消費者はネットフリックスやアップルのiPhoneプログラムのような、面倒なことが何もない定額サービスを探しています。

リースは利用者を特定のクルマに縛り付けるが、サブスクリプションではさまざまな車種に乗ることができる可能性がある。

サブスクリプションでは、クルマを持つことに伴う厄介な側面(登録、保険、保守)は気にしなくてもよい。

 

教育業界

多くの総合大学や単科大学が大規模オンライン公開講座を試しているが、私はこのアイデアを卒業後にまで拡張する必要があると思っている。

プロフェッショナル向けの学習プラットフォームが爆発的に成長している。

 

組織

財務チームは、単純な個別の販売処理をやっていればよかった状況が一変し、毎月300万~400万人に対して請求業務を行うことになった。

製品開発チームは、それまで年1回でよかったアップデートを毎月おこなわなくてはならなくなり、稼働時間延長やトラブル発生時のリカバリー、セキュリティ管理といった新しい課題に取り組む必要に迫られた。

経営陣は、営業チームを冗談めかして「儲け中毒」と呼び、彼らに向けてユーモアを織り交ぜた意識改革ビデオを作った。

その狙いは、意識面でもコミッション設計面でも四半期ごとの数字を追うのをやめ、長期的な受注に全力を注ぐ部隊に作り変えることにあった。

 

財務チーム

財務チームは、まったく新しいルールブックに基づいて一連の新たなメトリクスを試していくことになる。

顧客獲得コスト、生涯顧客価値、年間定期収益、顧客1人当たりの平均収益。

 

月々の利用料支払いだけで済むサブスクリプションは、財務部門の承認がスピーディーに得られるという点が気に入っていた。

 

伝統的な損益計算書は、継続的に出たり入ったりする金額と、そうではない1回ごとに出入りする金額を区別していない。

これまでの損益計算書は過去を映し出す写真である。

すでに獲得したお金、すでに支払った経費、すでに取った行動を記述しているものだ。

サブスクリプション・ビジネスの損益計算書は、将来に何が見えるかを記述するものだ。

 

サブスクリプション企業は、すべて「ARR(年間定期収益)」に焦点を絞って活動している。

バケツから水が漏れていない限り、利益のすべてを将来の成長に使うことは完全に理にかなっている。

 

マーケティング

サブスクリプション・モデルの最大の利点は、顧客とのあいだに真の1対1の関係を構築し、顧客の行動を理解し、カスタマー・ジャーニーを適切に導けるようになるということだ。

企業はその利点を自社のチャネルの中でどう活かせばよいだろう。

 

プロモーション

ストーリーテリングを「3つの部屋」というメンタルモデルで考えている。

  1. 製品の物語(それはいかにニーズに応えるのか)
  2. 市場の物語(必要としているのは誰か)
  3. そして最も重要なサービスとユーザーを広いソーシャルな文脈で結び合わせる物語(それはなぜ求められているのか)

サブスクリプション企業はプロモーション活動で何をすればよいのか?

物語を見つけ、その物語を人々に伝えること。

 

導入

とにかくサービスはできるだけ簡単に採用できるようにしておくこと。

同時に、大企業が全社で採用しても耐えられるものにしておくことだ。

わが社のサービスを個人的に使っている社員が1人もいない企業に採用してもらったことは、たぶん1社もないはずだ。

 

市場調査

数週間ごとに、彼らは私に、4種類のお菓子を詰めた箱を1個送ってくる。

私はオンラインで一言、フィードバックを書き送っている。

  • これは気に入った
  • これは好きじゃない
  • もう送ってこないで
  • 似たようなものをもう少し試したい
  • これは外さないで

顧客に提供するサービスに市場調査がすでに組み込まれている。

 

価格

価格は物理的な製品に対してつけるのではなく、それを使うことで得られる結果に対してつけなくてはならない。

全加入者の70%以上が基本パッケージに留まっているようなら、エントリーレベルのサービスとしては立派かもしれないが、早晩立ち行かなくなる。

 

成功の判断基準

自社のサブスクリプション・サービスが成功しているかどうかを判断する簡単な方法は、解約率が抑えられているかどうかを見ることだ。

 

提供するソリューションの幅を広げ、顧客が抱えている問題を幅広く解決する能力を持つことが、リテンション(顧客維持)につながるということだ。

効果的なアップセルおよびクロスセル戦略は、短期的には顧客価値を高め、間接的にはビジネスの長期的な成長を促す。

 

成長追求

サービスのローンチが成功したとしよう。

最初の顧客グループを大きく上回る顧客ベースも確保でき、チャーンを抑えることもできた。

こうなればアクセルを踏む準備ができたと言える。

あなたのサブスクリプション・ビジネスが健全、平均的な顧客の生涯価値が、顧客コストとサービス提供コストを十分に上回っている状態、であることが確認でき、市場にはまだ獲得できる多くの機会が残っているとすれば、そのときこそ本格的な成長追求に舵を切るときだ。

 

営業

営業活動は顧客に教えるという意味合いが大きい。

その意味で「わが社にはあなたと同じようなお客様がたくさんおられます。

サービスについて細かいお話をする前に、お客様と同じ業界で他の企業が実行していることから学んだベンチマークとインサイトについてお話しさせてください。」と言えるようにしておくことが重要なのである。

それができれば、売る側と買う側にダイナミックで対等な関係が生まれる。

 

3つの重要課題

より多くの顧客を獲得する、顧客価値(顧客単価)を高める、顧客をできるだけ長くつなぎとめる。

 

重要な点は、営業部隊はセグメントしなければならないということだ。

セグメントの基準は、顧客の事業規模でも、対象とする業界でも、顧客の地理的分布でも構わない。

営業というものは長期的な関係を構築し、維持し、深めることに他ならないからである。

そのためには顧客を知り、理解しなければならない。

サブスクリプション・ビジネスの営業担当者は相手の言葉で話す必要があるということだ。

それができるのは、何らかの基準でセグメントされた営業担当者だけである。

 

面白かったポイント

これはビジネスマン必読書です。

「サブスクリプションで月額課金でしょ」っていう人はこの本を読んでビジネスモデルを正しく理解したほうがいいでしょう。

サブスクリプションモデルが顧客と対等な関係を築くことができるビジネスモデルの一つだと思う。

 

正直、今のビジネスモデルをサブスクリプションに変革するのは難易度が高いですが、これが成功すればかなりのアドバンテージを得ることができる。

いつでも簡単に開始し、解約することができるサービスが増えることは、消費者にとっても喜ばしいことである。

アドビやネットフリック、アマゾンの成功をみれば、挑戦する価値があると思う。

 

もちろん、紹介されているITサービス企業だけでなく、どんな業種でも製品に付随するサービスを提供し、結果に対してコミットすればサブスクリプション・モデルは構築できます。

いろいろアイデアがもらえた本でした。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆☆

 

 

目次

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第 I 部 サブスクリプション・エコノミーの到来
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第1章 製品中心から顧客中心へ――すべては顧客を知ることから始まる
第2章 小売業にまつわる誤解――古い「筋書き」を逆転させる
第3章 メディアの隆盛――新たな黄金時代の幕開け
第4章 飛行機、電車、自動車――サービスとしてのモビリティ
第5章 新聞・出版――かつて新聞を出していた会社
第6章 テクノロジー産業の復活――〝魚〟を飲み込め!
第7章 IoTと製造業の興亡――モノを売る時代は終わった
第8章 所有から利用へ――あらゆるビジネスに広がる成長機会

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第 II 部 サブスクリプション・モデルで成功をつかむ
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第9章 企業がサブスクリプション・モデルを選択するとき
第10章 イノベーション――永遠のベータ版にとどまれ
第11章 マーケティング――4つのPが変わった
第12章 営業――8つの新しい成長戦略
第13章 ファイナンス――新しいビジネスモデルの構造
第14章 IT――製品ではなくサブスクライバーを中心に置く
第15章 組織にサブスクリプション文化を根づかせる

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