内容
複利
「どのレベルの複利を出せばよいか」という問いにひとことで答えると、「超過利潤」が出せるレベルまでということになります。
もうちょっと具体的に言うと、「資本コスト」を超える利回りを出し、それを複利で回していってくださいということになります。
超過利潤 =資本生産性─資本コスト
戦略
戦略第一フェーズ:鬼神のごとき顧客獲得
戦略第二フェーズ:解約率を抑えろ
戦略第三フェーズ:単価を上げよ
障壁
厳選投資家が画期的な製品から生まれる短期的利益には興味を示さず、どこまでいっても障壁の高さに気を配っている姿が目に浮かびます。
儲かる事業というものには、すぐに強い競争相手が出てくることを知っているのです。
この「規模の経済と顧客の囲い込みの組み合わせ」という障壁は、戦略的に、もう一つ重要なことを示唆しています。
「大きな池の大きな魚」より「小さな池の大きな魚」のほうが、障壁は強靭で「利回り」が長続きするという示唆です。
障壁が築けない事業の場合には、必死になって効率化を追求するしかない。
厳選投資家にとって「戦略」とは、「障壁によって超過利潤レベルの利回りを獲得し、障壁によってその利回りを長きにわたって防御する構想」だと集約されます。
障壁が立つのか立たないのか、その成否は非常識なほどのコスト投下、あるいはリスクテイク、いずれにしても圧倒的な「投下資本」にある。
「呆れるほどのコスト投入 →障壁が立つ →プロフィットが持続する」
「腰を抜かすほどのリスクテイク →障壁が立つ →リターンが持続する」
簡単に言えば、業界他社と違う投資行動をリスクテイクと捉えます。
たとえば他社が躊躇してやらないときに、誰もやらないレベルで大規模設備投資を行えば、アセットが他社よりも大きく積み増しされるわけですから一時的には業界平均よりROAは下がります。
一方で、その後、その投資が成功してリターンが上がれば、業界平均より高いROAを示すはずです。
プロフィットとリターン
私にとってプロフィットという英単語に最もぴったりくる日本語は「採算」という言葉です。
売上を立てるためにコストをしっかりとかけて、付加価値を作り込む。
作り込まれた付加価値がお客さんに認められ、それなりの値段で購入され、ようやく採算がとれていくという(なぜか、職人さんや匠の世界をほうふつとさせる)商売のサイクルです。
一方で、リターンという英単語が最もしっくりくる日本語は、「報酬」という言葉です。
こちらは戻りとか返還という訳語があてられている通り、リスクを取って投じたお金が、そのリスクテイクがうまくいった結果、報酬として還流してくるという流れを想起させる言葉です。
仮説
仮説的に考えるということは論理的に考えるということと単純に同じではない。
仮説は或る意味で論理よりも根源的であり、論理はむしろそこから出てくる……。
経営者に求めるもの
投資家が、自分には持ち得ないがゆえに経営者に求めるもの、それがIdiosyncratic Vision、または事業仮説です。
「この事業はこのように進化するはずだ、俺にはそれがありありと見えるんだ」という経営者ならではのビジョン。
これが事業の宿命すら変え、なかなか追いつけない障壁と、長く持続する超過利潤を生む正体です。
場合によっては新たな産業まで生み出すのです。
勝者の呪い
創業経営者が強靭な障壁を作れば作るほど、後輩たちはその障壁に安住し、果敢なリスクテイクをしなくなっていく、という「勝者の呪い」がここに見えてくる。
企業価値
企業価値を大きく左右する六つの重要議案
1.中期経営計画などの経営計画
2.大規模なM&A
3.撤退を含む事業ポートフォリオの再構築
4.大規模な投資(設備投資、研究開発投資、IT投資など)
5.資本政策、BS最適化、株主還元
6.意思決定プロセス/ガバナンス機構の設計
みなで豊かになるためのチェックリスト
ROA
ROAとROICの乖離は大きくなっていないか?
事業に直接使っていない資産(現預金、持ち合い株式)が膨れてはいないか。
低稼働な固定資産の売却や、高額で買収した企業ののれんの償却は考えられないか。
ROIC
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)はもっと短縮できないか。
売掛金サイトはむやみに長期化していないか。
在庫水準は安全サイドに振りすぎていないか。
買掛金のサイトは適切か。
ROE
ROEとROICがほとんど同じ数値になっていないか?
適切なレバレッジを考えずに、資本コストの高い株主資本が過大になっていないか。
配当政策や自社株買いポリシーが横並びで、自社の独自性に合っていないのではないか。
WACC
事業リスクと見合った財務レバレッジを考えてあるか。
適度な負債を活用してWACCを下げられないか。
WACC
WACCとは、負債と株主資本の比率によって、負債コストと株主資本コストを加重平均し、企業の資金調達に伴う平均的なコストを計算した指標です。
WACCはBSの右側全体なので、BSの左側全体から生まれている資本生産性がこれを超えているかという点が最初のハードルになる。
現金保有
私は人件費の二年分だけのキャッシュを会社に備えておきたいと考えています。
経営には不確実性がつきものです。
売上が突然大きく落ち込むことは十分あり得ます。
そういうときに大事なスキルを持った人員をリストラしてしまっては本末転倒です……。
しかし、二年分の人件費さえ確保していれば、時間的猶予を持って危機に立ち向かうことができるはずです。
二年間あれば大概の事業は再生できるはずですし、二年も猶予があるのに事業を再生できない経営者は、経営者としては失格だと思いますよ。
面白かったポイント
経営者と投資家、そして従業員との三位一体の経営というコンセプトは素晴らしい。
これまで日本は経営者と従業員の二人三脚でやってきたが、経営に活かせるような投資家との付き合い方はしてこなかった。
私自身、投資家として企業研究をしてきた経験が自分のビジネスを客観的に見る目に活かされていると思う。
特に、仕掛けや損切り、資金管理は単なるトレーディング手法ではなく、経営そのものである。
従業員としてスキルを身につけること、投資家として企業研究すること、経営者として自分のビジネスを経営することを一通りやると俯瞰してビジネスを見て、運営することができる。
3つの視点を持つこと、そしてそれを融合して物事を捉えることの大切さを学ぶことができた。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆