内容
コンフォート・ゾーンから飛び出す
一般的に、何かが「許容できる」パフォーマンスレベルに達し、自然にできるようになってしまうと、そこからさらに何年「練習」を続けても向上につながらないことが研究によって示されている。
一般的に、何に挑戦するかにかかわらず、自分のどの部分がどう未熟なのかを正確に特定するためにはフィードバックが欠かせない。
自分自身から、あるいは外部のオブザーバーからのフィードバックがないと、どの部分を改善する必要があるのか、目標達成にどの程度近づいているのかがわからないのだ。
自らをコンフォート・ゾーンの外へ追い立てることなくして、決して上達はない。
自らのコンフォート・ゾーンから飛び出すというのは、それまでできなかったことに挑戦するという意味だ。
身体と同じように、脳でもコンフォート・ゾーンの「はるか上」ではなく「少し外側」というスイートスポットで最も急速な変化が起きるのだ。
壁を乗り越える
一般的に、壁を乗り越える方法は「もっと頑張る」ことではなく、「別の方法を試す」ことだ。
テクニック、つまりやり方の問題なのだ。
壁を乗り越えるのに一番良いのは、別の方向から攻めてみることで、教師やコーチの存在が役立つ理由の一つはここにある。
あなたが直面する壁がどのようなものかを、すでに経験している人であれば、その克服法を提案してくれるだろう。
ときには壁が精神的なもののこともある。
目的のある練習の特徴を簡潔にまとめてみよう。
まず自分のコンフォート・ゾーンから出ること。
それに集中力、明確な目標、それを達成するための計画、上達の具合をモニタリングする方法も必要だ。
それからやる気を維持する方法も考えておこう。
心的イメージ
優れた選手ほど次に何が起きるかを予測するのが得意なのは、より可能性の高い展開をいくつも予想し、比較検討し、最も効果の高そうな行動を選択する能力と関係しているというものだった。
要するに優れた選手ほど、フィールドで起きている動きのパターンを解釈する能力が高かったのだ。
大きな成功を収めている販売員は、そうではない人々と比べてはるかに複雑で統合された「知識構造」(本書で「心的イメージ」と呼んでいるもの)を持っていることがわかった。
特に優れた販売員は、高度に発達した「こういう場合はこうする」という構造をたくさん持っていた。
「ある顧客にこうした条件が当てはまった場合、こういう発言や行動を取る」というパターンである。
一流の保険販売員は保険の知識が高度に組織化されていたために、どんな状況でもどんな対応をすべきか迅速かつ的確に判断できた。
だからこそ優秀な販売員になれたのだ。
コーチや教師
できるだけ優れたコーチや教師と練習するのが一番良いということだ。
有能な指導者は優れたトレーニング計画に含まれるべき要素をわかっており、必要に応じて個々のプレーヤーに合った修正を加えていく術を心得ている。
あなたが成功するために一番重要なことの一つは、優れた教師を見つけ、その指導を受けることだ。
先生がいなくても効果的に技能を高めるには、三つの「F」を心がけるといい。フォーカス(集中)、フィードバック、フィックス(問題を直す)である。
練習
長期的に勝利するのは、知能など何らかの才能に恵まれて優位なスタートを切った者ではなく、より多く練習した者である。
何かを長い間継続すれば徐々に上達するというものだ。
これも間違っていることはすでに見たとおりだ。
同じことをまったく同じやり方でいくら繰り返しても上達はしない。
むしろ停滞と緩やかな能力低下は避けられない。
効果的な介入
関係者は最高のパイロットのどこがそれほど優れているのか時間をかけて研究しようとはしなかった。
代わりにパイロットが実際のドッグファイトで遭遇しそうな状況を模したプログラムを立ち上げ、実戦のようなコストをともなわずに何度も繰り返し練習し、フィードバックを受けられるようにした。
これはさまざまな分野において、かなり優れたトレーニング・プログラムの作り方と言えるだろう。
最も効果的な介入はロールプレイ、ディスカッション、問題解決、実地訓練など何らかのインタラクティブな(相互作用的)要素を含むものであることがわかった。
対照的に最も効果が低かったのは講義中心の介入、すなわち参加する医師らが講義を聴くだけの教育的活動で、残念ながら継続医学教育で最も多いのがこのタイプだ。
このように受動的に講義を聴くのは、医師の技能にも担当患者の治療結果にもまったく有意な効果がないとデービスは結論づけている。
ネット上のインタラクティブな継続医療教育では、医師や看護師が日々の診療現場で直面するような複雑な状況を再現するのはきわめて難しい。
技術に集中する
自分の技術に集中し、一つひとつのストロークをできるだけ完璧に近づけようとすればいいのだ。
特に自らのストロークの心的イメージを磨きあげること、つまり「完璧な」ストロークをしたときの具体的な身体感覚がどんなものか突きとめることに集中すればいい。
理想的なストロークの感覚がどのようなものかはっきりわかれば、疲れたりターンが近づいたりしたときにその理想から外れてしまったらそうとわかる。
逸脱をできるだけ抑え、ストロークを理想に近い状態に維持するよう努めるのだ。
練習の効果を最大限に高めるコツだ。
ボディビルや長距離走など、トレーニングの大部分が単純に何かを繰り返す作業のように思えるスポーツでも、一つひとつの動きを正しくやることに意識を集中すると上達が加速する。
トップクラス
傑出したプレーヤーの顕著な特徴の一つは、その道のトップクラスになってもさらに練習方法を改良し、上を目指そうと努力しつづけることだ。
こうして最先端を走りつづける人こそ新たな道の開拓者として、それまで誰も到達したことのない領域に足を踏み入れ、人間の信じられないような可能性をわれわれに見せてくれる存在なのだ。
学生に一つの分野で心的イメージを身につけさせると、その分野だけでなく、どのような分野でも成功するには何が必要か、理解するきっかけとなる。
何らかの分野でトップレベルに到達するのに何が必要か身をもって体験すれば、他の分野でトップに立つのも同じような努力が必要なことが少なくとも頭ではわかるはずだ。
面白かったポイント
コンフォートゾーンから抜け出すというのが刺さりました。
練習を続けると熟練度が上がって、いつの間にか負荷が下がっているということがあります。
負荷が下がると成長率も低下するので、負荷が下がる居心地の良さと物足りない感が同居するフェーズになるのだと思います。
これは意識的に今コンフォートゾーンにいないかということをチェックしないといけません。
自分でやるのも難しいので教師やコーチが必要です。
自分はこのコーチになりたい欲求もあります。
あとは、的を絞ってトップクラスを目指すということも大事。
いろいろなことに手を出してどれも中途半端になるのがよくない。
トップクラスに入ることは難しい。
一つの分野に集中できるかどうかは飽きることとの戦いになる。
最後に練習は実践でやるのが一番効果的。
つまり負荷の高い行動をし続けることが超一流になる道ですね。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
■序 章 絶対音感は生まれつきのものか?
■第一章 コンフォート・ゾーンから飛び出す「限界的練習」
■第二章 脳の適応性を引き出す
■第三章 心的イメージを磨きあげる
■第四章 能力の差はどうやって生まれるのか?
■第五章 なぜ経験は役に立たないのか?
■第六章 苦しい練習を続けるテクニック
■第七章 超一流になる子供の条件
■第八章 「生まれながらの天才」はいるのか?
■終 章 人生の可能性を切り拓く