グローバルエリートが目指すハイエンドトラベル

ビジネス

『グローバルエリートが目指すハイエンドトラベル』山田理恵

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内容

ハイエンドトラベラー

全世界の旅行者のたった3%に当たるハイエンドトラベラーが、全世界の旅行消費全体の4分の1を占めています。

世界のハイエンドトラベル市場の7割弱をアメリカやヨーロッパのマーケットが占めています。

 

彼らの旅の目的は「浪費」ではなく、「自分を高める特別体験」

見知らぬ文化、文明を五感で感じることで、好奇心をそそられ、インスピレーションを得る。

日々の閉塞感から脱却し、自分を相対化させ、解放する。

自身の既成概念を疑い、新たな思考に至る。

旅には、そんな魔力があります。

 

現在の旅のルーツと言えるものは、自国では習得できない教養や技術、他の国の政治や文化、豊かなライフスタイルについて学び、社交の経験を積むことにありました。

旅は自分を高める格好の機会だったのです。

 

シンク・ウィーク

ゲイツは年に2度ほど、休暇とは別に1週間ほどオフィスを離れ、日々のルーティーンから解放されました。

それは、タスク過多で生産性が低下している脳をリセットし、クリエイティブなエネルギーを取り戻すための文字通り「考える週」でした。

 

商談の冒頭に「クライアントのご要望は?」と切り出したところ、ほとんどの旅行会社が口を揃えて「本物でユニークで、まだ誰も見たことのないもの(Something authentic, unique, and nobody has ever seen!)」と答えました。

中でも象徴的だったのが、「カクテルパーティーやディナーの席で皆を惹きつけるネタになる特別な体験を顧客が求めている」というもの。

 

旅の話題は話すほうも聞くほうも旅している気分になれて、いい気分転換になる。

どんな旅を選択し、創造するかはその人自身の嗜好や考え方を表わすから、ビジネスの場で相手の人となりを知るためにも効果的だよ。

 

ハイエンドトラベルの楽しみの上位に上げられるの「食」の本質もわかるのです。

「食」はかつてはローカル色や旅情を感じるもの、愛好家や好奇心の強い人々のための安息の地でしたが、今や食材の選び方、味付け、盛り付け、器との取り合わせなどにアートとしての表現の要素が求められています。

 

ラグジュアリートラベラーの旅のモチベーションは、視野の拡大、自己反映、自己啓発、そして自然や文化とより精神的なレベルで親密に対話することにシフトしてきています。

 

フィリップが旅に求めることは、異なるライフスタイルを発見し、家族と新たな思い出を紡ぐこと。

自分たちの食文化と異なる料理を食べ、冒険的な体験をし、その土地の色彩、空気感などと自分が繋がることが重要だと言います。

「世界の複雑さへの好奇心と理解を持つことは、私自身を高めてくれる。なるべくいろいろな大陸や国に足を運び、違う文化や文明に触れるようにしている」

 

訪れる国の小説や詩を旅先にも持っていくようにしています。

 

幼い頃から異世代や、家族以外の多様な人や外国人との社交を通じてコミュニケーション力を身に付けていく、そのことが人間の幅を広げるのだと身に染みて感じたのでした。

 

ニヒワトゥ

世界ではニヒワトゥのような一泊の宿泊費が最低40万円もするスーパーリゾートが続々誕生し、予約が困難なほどの人気を博しています。

中でも人の心を打ち、リピーターが絶えないリゾートには、共通して創設者やオーナーの夢と志があります。

 

ハイエンドなリゾート運営が社会の問題解決に貢献し、それがハイエンドトラベラーの意識を高め、さらなる社会貢献を喚起するというTTの好循環。

 

アマンやリッツカールトン、フォーシーズンズでの滞在型の宿泊体験。

でもこのレベルを過ぎると、その先がないんだ。

 

ハイエンドとは「占有」だと改めて感じさせられます。

「たとえば対岸に安っぽいホテルができたりするような、僕のビジネスを破壊するようなリスクを回避するために、視界に入るすべての土地を買い上げて『崖』を作った」という徹底ぶり。

スタッフ総出でビーチを掃除し続け、浜辺に外部者が入ってきたら警察を呼ぶなどの努力を重ねた結果、1キロ以内の住人以外は入ってこなくなりました。

 

スンバ財団はプロジェクトの進捗状況をゲストに報告し続け、ゲストはプロジェクトの完成を見にまたリゾートに戻ってくる。

寄付の恩恵を受けた人々の幸せな笑顔に出会い、ゲストはさらに支援したい気持ちになり、再度ニヒワトゥに戻ってくる。

 

おもてなし

パリ滞在中、あるファッションブランドの本店に入った時のことです。

手の空いていた会計スタッフに何の気なしにランチのお勧めを聞いたところ、引き出しの中から150件近くに上る独自に作成されたとみられるエリア別レストラン・リストが出てきました。

そこには美術館やイベントなどの情報も揃っていました。

スタッフの誰が聞かれても個人の好みでなく、そのブランドの認めるしっかりとした提案ができるよう準備されていたのでしょう。

 

トップから担当レベルまでそれぞれが、高いモチベーションを維持しながら継続的かつ重層的に情報収集に努め、それをすべてのスタッフで日々共有するシステムが確立していることには敬意の念を抱きます。

 

ショッピングと食、アートイベントなど、街の魅力を司るピースを取りまとめて必要に応じてゲストに提供するという、滞在を何倍も魅力的にする役割を、ホテルのコンシェルジュのみならず、都市全体で担っていくことが、その街の価値を高めるのです。

 

もてなしとは非日常空間体験、美的体験です。

人間として生きるにあたって、よい空間でよい美術品と対話することによって、魂と直感力を磨き、いいものを食べ、豊かな人と一緒に過ごして自分の身体と心を悦ばせる。

そうして明日への活力を養い、Better World Better Futureのためにイノベーティブに生きる。

 

口コミが良質のゲストに伝わる最も確かな手段で、特にハイエンドトラベルにおいては、誰かの紹介かが何より大事だということを改めて認識することが必要です。

 

人材

ユニークな体験を得るために、コミュニケーション能力が高く、個々のニーズに応えられる深い専門知識を持ったアドバイザーを求めています。

今後成功するのは、人間味があってテクノロジーの革新的な使い方を兼ね備えた旅の目利きです。

 

一人ひとりのゲストと接する時を特別なものにするために、情熱的でエネルギッシュで、人としての温かみを兼ね備えたタレントが必要だ。

MEブランドの柱であるデザイン、ファッション、ミュージック、アートに興味を持っていることが前提。

 

企業が社員を異なる社会に送ってインスピレーションを得るというインセンティブを与える動きも出てきています。

ある一定期間、企業が社員にどこか違う文化の国でリモート・ノマドワークの機会を与え、社員のモチベーションを上げるというものです。

 

面白かったポイント

ハイエンドトラベラーの生態が垣間見える本です。

旅という非日常体験を通じて、自分を高めることが重要ですね。

そのための仕組みづくりが求めれています。

日本には、食、自然、文化などの素材は十分に揃っているのですから、それをうまく見せる、気持ちよく体験できる仕組みづくりだけだと思います。

ハイエンドトラベルの可能性はこれからますます広がります。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆

 

目次

HIGH END TRAVEL
はじめに なぜ今ハイエンドトラベルなのか?

TRANSFORMATIVE TRAVEL
第1章 旅は人生のスパイス

NIHIWATU SUMBA INDONESIA
第2章 世界をポジティブに変えるハイエンドリゾート

DHARA DHEVI HOTEL CHIANGMAI THAILAND
第3章 美意識を磨き、伝統の英知を学ぶ

ME LONDON / THE UPPER HOUSE
第4章 感覚を刺激しエネルギーレベルを高める

ASIAN LEADERSHIP INSTITUTE CHIANGMAI SALT LAKE CITY
第5章 直感を研ぎ澄まし視野を広げる意識の旅

G1 SUMMIT JAPA
第6章 同志に出会い、未来を創る旅

URBAN CABIN KAMAKURA JAPAN
第7章 都市の競争力を磨くアートコミュニケーション

BLEISURE BLUXURY
おわりに 好奇心で開拓するブラグジュアリー・マーケット

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