データ・ドリブン・マーケティング

ビジネス

『データ・ドリブン・マーケティング』マーク・ジェフリー

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内容

社内プロセスは効果測定を前提としていないし、データ・ドリブン・マーケティングに必要なITインフラも整っていない。

しかしながらそれ以前に、私の経験上、多くのマーケティング担当者は大量のデータに圧倒され、成果を向上させるための効果測定についてはどこから手をつければよいのかがわからない、という状態にある。

加えて、55%の管理職が自分の部下はNPVやCLTVといった指標を理解していない。

 

重視する15のマーケティング指標

①ブランド認知率

②試乗(お試し)

③解約(離反)率

④顧客満足度(CSAT: Customer Satisfaction)

⑤オファー応諾率

⑥利益

⑦正味現在価値(NPV: Net Present Value)

⑧内部収益率(IRR: Internal Rate of Return)

⑨投資回収期間

⑩顧客生涯価値(CLTV: Customer Lifetime Value)

⑪クリック単価(CPC: Cost per Click)

⑫トランザクションコンバージョン率(TCR: Transaction Conversion Rate)

⑬広告費用対効果(ROAS: Return on Ad Dollars Spent)

⑭直帰率

⑮口コミ増幅係数(WOM: Word of Mouth、ソーシャルメディア・リーチ)

 

RFM分析

Recency

Frequency

Monetary Value

 

不況期

不況期において適切な戦略は、マーケティング投資を増加させることだ。

上位企業たちは、景気後退期においてマーケティング投資をむしろ積極的に行っているのだ。

 

顧客分析

エクセルこそ非常に強力なツールであり、これこそがキラーアプリだ。

 

顧客を理解するための分析だ。

取り扱うデータが数千の顧客数であれば、エクセルで始めることを勧める。

数百万もの顧客数であれば専門ツールの導入が必要だろう。

顧客分析の結果、きめ細かい顧客セグメンテーションの必要性に直面し、多くは顧客ターゲッティング、データ・ドリブン・マーケティングへと進んでいくことになる。

 

B2C企業であろうがB2B企業であろうが、顧客データを収集しようと思うならばそれに見合う価値を提供する必要があるということだ。

顧客やB2Bパートナー側が、情報提供と引き換えに何を得られるのかを考えて、それを用意しなければいけない。

また、顧客情報は安全に管理され、無断で外部と共有されないという約束も重要で、これを順守することは、顧客との信頼関係構築のために不可欠だ。

 

マーケティングによる企業の持続的競争優位性は、模倣困難な一連の活動によってもたらされる。

 

重要性の高いデータを入手することに集中しよう。

80%の成果をもたらしそうな20%のデータとは何であるかを見極め、そこから始めるのだ。

 

前日に世界中で計上された売上を地域別、顧客企業別、商品別に分解したり、あるいは特定のセールス担当者の売上を確認したりすることができる。

顧客や代理店にとって、データをメーカーに提供・共有することによって得られる価値が非常に明確になっているということだ。

サントリーやマイ・コーク・リワードのケースでは、それは商品・サービスの割引やノベルティグッズを手に入れられるということであった。

 

常に意識する必要があるのは、顧客との交流やコミュニケーションを通じて、新たな価値を生み出すことであり、情報を得ることで、顧客の弱みにつけこむようなことがあってはならないという点だ。

 

組織

他部署において、自分と同じ階層の仲間を見つけ、非公式な社内横断チームを組むことによって、初期的な成功事例を実現させていくことができた。

誰から説得していけばよいかを見極めるためには、まず組織内の誰が、力と意志を持っているかを理解する必要がある。

組織で最も力と意志を持つのは、部門の幹部とは限らないし、むしろそうでないケースの方が多い。

 

測定することができるものは、コントロールすることも可能だということだ。

マーケティングについても、指標や測定結果を組織内で公開することは、変革を後押しすることになるだろう。

しかし、大切なのは、測定する対象を間違えないことだ。

多くの組織では、マーケティングの結果ではなく、マーケティング活動自体を評価・促進してしまいがちなので、マーケティングの成果・価値をしっかり測定する指標に焦点を当てる必要がある。

 

組織の変革に際して、トレーニングや研修は極めて重要な要素だ。

従業員トレーニングを通じて、新しいテクニックや手法、ツールが企業文化の一部になっていく。

 

指標

数ある比較検討・評価マーケティングの効果を集約した指標がある。

それは「お試し」だ。

 

測定に値するもうひとつの指標は、ショールームへの来店者数だ。

来店者が増えると試乗者も増え、そのうちの一定割合が車を購入することになる。

 

走行距離3000マイルを超えた顧客向けにオイル交換を促すオファーを送付するような、能動的なイベント・ドリブン・マーケティングも、ロイヤルティ・マーケティングのひとつだ。

リピート購買に加えて、解約率もロイヤルティの重要指標だ。

 

興味深いことに、所有する車で何らかのトラブルを経験した人の方が、トラブルを経験しなかった人と比べて、満足度もリピート購買意向も高かった。

トラブルに直面した際の素晴らしい顧客サービスが、ブランドイメージの向上に貢献していたのだ。

 

アンケート

アンケート結果に基づく調査・研究を繰り返すうちに、マーケティングにおいては、「間違っている」状態から、「大体合っている」に修正することによって大きな価値がもたらされるということがわかってきた。

そして、私も定性的なデータを重宝するようになった。

 

1人や2人を対象に「購入意向」を尋ねても、結果は信頼に足るものにならないことは間違いない。

しかし、対象者に広告を提示し、その後で同じ質問をするということを、350人に対して繰り返せば、そこには統計的有意性が生まれる。

結論としては、定性的なデータは有用だが、サンプルサイズが十分に足りていることがその前提になるということだ。

 

実際的な目安として、アンケート結果に基づいて判断する場合、100人のサンプルがあればそこそこ良いし、300人を超えれば、かなり信頼性が高いと言えるだろう。

ただし、1人の人に対する詳細な個別インタビュー調査や、6〜10人を対象にしたグループインタビュー、あるいは30〜50人を対象にした小規模なインターネット調査などが、消費者インサイトをつかむのに非常に役立つことも多々ある。

 

ブランドイメージ

CPAが最も低い媒体が最も効率的ということになるのだ。

しかしながら、この方法ではマーケティングとしての効果が考慮されない。

効果とはすなわち、当該広告が実際にブランドに抱く消費者のイメージに影響を与えることができたか否か、という点だ。

広告で非常によくある失敗は、クリエイティブの好意度は高いものの、消費者がどのブランドの広告であったかを覚えていないというものだ。

 

ロイヤルマーケティング

自社にとっては低コストだが、顧客は大きな価値を感じてくれるサービスを無料で提供する。

30日および90日単位での解約数を最小化することに重点を置いている。

 

マネジメント上の意思決定では、絶対的な正解や不正解は存在しない。

しかしながら、往々にして「より状況にマッチした」答えは存在するというのが私の考えだ。

 

ROIの式では、お金の時間価値を考慮に入れていない点だ。

将来手に入るお金は、現在手元にあるお金よりも価値が低いはずだが、このROIの式ではどの時点でもお金は等価値として扱われることになる。

 

2点目は、実施期間に関する要素が含まれていない点だ。

たとえば、2つのキャンペーンがあり、1つは9カ月間、もう1つは3年間にわたって実施されるとし、この定義に基づくROIは2つのキャンペーンとも100%だとしよう。

ROIの数値は等しいが、この2つの収益率はまったく異なるということは直感的にすぐわかるだろう。

 

すべての顧客は平等ではないという現実に即した形でマーケティングおよび営業戦略を組み立てる方が、明らかに理にかなっている。

 

顧客生涯価値

ACは新規顧客獲得費用、Mnがn期において当該顧客によってもたらされる粗利益、Cnが当該顧客へのマーケティングおよび対応にかかる費用、pが当該顧客がその年に取引を継続する確率、Nが対象となる年数を表している。

 

将来のお金は現在のお金よりも価値が低いため、(1+r)で割り引くことで現在価値を計算する。

通常のNPVとCLTVとの大きな違いは、顧客が取引を続ける確率であるpで、これは継続率と呼ばれる。

この確率はすなわち、1から顧客が解約する確率を差し引いたものだ。

 

顧客は高価値、中価値、マイナス価値という3つに大きく分類できるだろう。

マイナス価値の顧客に対しては、より低コストなサービスへと移行し、厳格なコスト管理を行うのが正しい戦略だ。

高価値顧客層に対しては、リテンション活動を行いながら、製品やサービスのクロスセルやアップセルを図っていく。

中価値顧客層に対しては、どの製品やサービスのクロスセルを実現すれば彼らが高価値層に移行するかを分析し、高価値顧客へと移行させるようなマーケティングに集中するのが得策だ。

 

実は一部の顧客が返金システムを逆手に取り、返金を受けることを目当てに頻繁に苦情の電話をかけていたのだ。

一方で、高価値の顧客は返金を求めて苦情の電話を入れることはあまり多くないが、黙って競合他社に乗り換えてしまう可能性が高いということが判明した。

 

「当社にとって重要度の高い顧客ほど苦情を言わない傾向にあります。しかし、顧客が当社のフライトにおいて3回連続でトラブルを経験すると、それはすなわち当社がその顧客に対して清潔、安全、信頼性を提供できていないということであり、その顧客が他社に乗り換えてしまう危険性が飛躍的に高まります。だからこそ我々はこれらのお客様に対して能動的に働きかける必要があるのです。マーケティング活動を通じ、サービス体験の改善に努めています」。

 

マイナス価値の顧客が存在していても、顧客自体がマイナス価値なのではなく、ビジネス・プロセスや提供チャネルに欠陥があってマイナス価値が発生していると捉えるべきだ。

 

マーケティングプロセスの壁

  1. 経営陣からのサポート不足
  2. 信頼の不足
  3. 部門間協力の不足
  4. スタッフのスキル不足

 

まずはプロセスを定義し、結果を出し、その後プロセスを標準化・自動化するためにITインフラに投資するという順番で進めるべきだ。

マーケティング・マネジメント・プロセスは、マーケティング部門が主体的に作成し、シンプルでわかりやすい資料で共有される必要がある。

 

データ・ドリブン・マーケティングへの組織変革を始めるのと並行して、プロセスを資料化し、常に更新していくことを勧める。

資料は分かりやすく、すぐに参照できるようになっていることが重要だ。

 

面白かったポイント

データに基づくビジネスプロセス改革です。

この本を使って実践に落とし込むところまでは難しいと思いますが、基本的な考え方を学ぶことができます。

優れた会社はデータ・ドリブンの組織になっていますし、そうでなければ大きく成長することができないでしょう。

 

専門としてやってきたためか、個人的には少し物足りなさを感じがしました。

 

満足感を五段階評価

☆☆☆☆

 

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