内容
経営
「経営はまず結論ありき」で、最終的に何を求めて経営していくかを決め、そこから逆算して、結論に至る方法を考えられる限り考え、いいと思う順からまず実行する。
そして、実行の足跡と結論を常に比較し、修正していく。
「そうすれば、大概なことはうまくいくんだよ」
目標を明確に定め、周囲に強烈に示し、成功を目指せと。
良い経営
良い経営とは、問題が起こった時にそれを解決するだけではない。
良い計画は、将来起こりそうな問題の予見と、それらを回避するためにとるべき手段と、事前に回避することができなかった場合には、ただちにそれらを処理する方策を包含していなくてはならない。
良いマネジャーは経験から学び、ひとつの会社なり事業部を統率するようになった時には、やって効果のあることと、ないことを嘆ぎ分ける一種の第六感を身につけていなくてはならない。
さまざまな選択の中から最善のコースを選ぶことができるように、状況と問題と人間的要素を分析する能力をそなえていなくてはならない。
そして用心深い人間であれば、最初のやり方が失敗したら、つぎに打つ手を準備していなくてはならない。
それが「宿題をやる」ということだ。
経営陣
締まりのない、機能の鈍い持ち株会社から、まとまった、管理の行き届いた企業主体へとITTを組織し直す必要があった。
私がもくろむ成長をできるだけ達成するためには、何よりもまず、本社の経営陣をオーバーホールする必要があった。
優秀なマネジャーとスタッフをITTに誘引する必要があった。
私が欲しいのは、たんに有能というだけでなく、ボトムラインという私のアイデアを達成するのに必要な、早いペースと長時間仕事に縛られることを、ものともしない内的なエネルギーと革新的な思考を持った人物だった。
取締役会
取締役会は会社の所有者l株主lの利益を代表し主張すべきものとされている。
取締役会の第一の機能は、マネジメントの会社の経営ぶりを監視、評価し、もしそれが不適切または満足できないものであれば、それについてなにかをすることである。
それは取締役会が会社を経営することを意味するものではない。
その仕事のためにはプロフェッショナルマネジャーたちが雇われている。
取締役会は所有者を代理するために選任されたのだ。
その責任はマネジメント、なかんずく最高経営者の勤務評定をし、みずからの判断に基づいてマネジメントに報い、あるいは彼らを罰し、交替させることにある。
リーダー
良いリーダーのやることは紳士的でなくてはならない。
紳士的とはどういうことか、彼は知っていなくてはならない。
ほかの者はみんな知っている。
むろん、だれも自分のリーダーが、無知、不決断あるいは弱さから、無能を甘やかすことを望みはしない。
弱いリーダーについていきたいとはだれも思わない。
リーダーとして、弱いことは最低である。
そんなリーダーの判断は頼りにできない。
なぜなら、困難な状況にぶつかったら、どう変わるかもわからないからだ。
困難で、不評判ですらある決断をすることを恐れない強いリーダーのほうが-ただ、目下の人間を扱うのに紳士的で公正で信頼できるということが知れわたっている限りにおいて-ずっと多くの尊敬と忠誠を得られる。
彼らはみんな、いつになったらリーダーは真の状況に目覚めるのだろうかと心待ちにしていたのだ。
同じ理由から、良い人間が窮地に陥っている時(最優秀の人間にも、そういうことは起こる)できる限りその人物を支え、助けてやるのはリーダーの責任である。
リーダーはその人物に忠誠を尽くす義務がある。
なぜなら忠誠心は双務的なものだからだ。
この場合もまた、リーダーの言動は会社じゅうに反響を呼ぴ起こすだろう。
マネージャー
自分はそれほど熱心にやる気はないし、そんなにあくせく働くつもりはないと思うなら、真のマネジャーになることはあきらめたほうがいい。
なぜなら、そんなことではトップのレースの途中で、だれかに追い越されてしまうにきまっているからだ。
逆に、もしそうした個人的犠牲を払う気があるなら、そうするがいいし、不平は言わないことだ。
それを望んだのは自分であり、だれからも強制されたわけではないのだから。
高い目標
チームを組むには、達成すべき目標が「努力するに値すること」だという認識と情熱をチーム全員に共有してもらわなくてはいけない。
そこで重要なことは、できそうもない目標、努力したらできるギリギリの目標を掲げることだ。
そして、経営トップとメンバーが対等の立場で議論を重ね、合意したうえで、仕事を進める。
高い目標を示さない限り、誰も熱狂的に仕事をしない。
マネジメント
どんな会社でも、マネジメントの基本的な仕事は経営することである。
私は自分の職業経歴を通じて、何百回、何千回となくそのことを強調した。
マネジメントは意思決定をおこない、それらの決定が遂行されるようにすることによって経営する。
そしてマネジメントがそれに成功する唯一の道は、会社の福利に影響を及ぼすあらゆる状況に関する事実を完全に把握することだ。
最高経営者を首長とするトップ・マネジメントは、いわば会社というてこの支点である。
月次報告書
各プロフィット・センターからの月次営業報告書には、売上高、収益、在庫、受取勘定、就業統計、マーケティング、競争、研究開発、現在直面している問題と予想される問題、そして最後にその年の残余期間の予測に関するあらゆるデータが盛りこまれていた。
マネジャーたちは自分たちが営業をおこなっている国々の経済ならびに政治情勢を含む、それぞれの事業部の営業活動に影響を及ぼし、また及ぼす可能性のあるあらゆることを月次報告書に書きこむことになっている。
基本ポリシーのひとつは、「びっくりさせるな!」ということだった。
企業にあって、びっくりさせられることの99%までは良くないことに決まっている。
経営チームとしてわれわれがどれほど熟達していようとも、だれかがきっと失策を犯し、予期しなかったことが起こり、問題が生じるものだ。
しかし、予期しなかった問題を発見し、それに対処するのが早ければ早いほど、解決するのはそれだけ容易になる。
その全部を早期発見することはできないかもしれないが、手遅れにならないうちにそうした状況の95%に対処できれば、残りの時間とエネルギーを、網の目に漏れた2、3の大きな問題の処理に向けることができよう。
間違いをしたり、たまに過失を犯したりするのは恥でも不面目でもないと私は本気で言っているのだということを、マネジャーたちに納得させるのにはしばらく時間がかかった。
過失はビジネスにつきものの一面であり、そのように扱われるべきものである。
重要なのは自己の過失に立ち向かい、それらを吟味し、それから学び、自己のなすべきことをすることだ。
唯一の本当の間違いは、間違いを犯すことを恐れることである。
ひとつの対応がうまくいかなかったらつぎの対応を、そしてまたつぎの対応を……目標に達成するまで試み続けたからである。
それが「経営する」ということなのだ。
数字
「数字は企業の健康状態を測る一種の体温計の役をする。それは何が起こっているかをマネジメントに知らせる第一次情報伝達ラインとして機能し、それらの数字が精密であればあるほど、また〃揺るがすことができない事実″に基づいていればいるほど、情報は明確に伝わる」
数字自体は何をなすべきかを教えてはくれない。
それは行動へのシグナル、思考への引き金にすぎない。
『ある事業部のひとつの要素を表すものとして、4という数字に彼がぶつかったと仮定しよう。
その4を分析した結果、それは2+2あるいは3+1を表しているのではないことを発見するかもしれない。
ビジネスにおいては、4という数はプラス12とマイナス8の和を表していることがしばしばある。
プラス12という数字にはすこし掛け値があるかもしれない、と彼は思うが、それよりもまずマイナス8のほうに注意を集中し、それがプラス5とマイナス13から成り立っていることを発見する。
それから彼はマイナスを掘り下げて、13の損失をセーブすることができ、その結果をその事業部の総和の4という数字に適用すると、新しい総和は17となり、それは新しい体制の健全な利得となる。
つまり彼は数字の背後にあるものを変えたのである」
プレッシャー
営業戦績へのプレッシャーが、上からも下からも、そこへ集中される。
会社を所有し、取締役会によって代表される株主たちは、いやが上にも利益と発展と、資本収益の向上を求める。
彼らは常により多くを求め、それはしごく当然なことでもある。
一方、生産ラインに配置されている男女は、より高い賃金、より良い機会、より良い労働条件、そしてマネジメントからのより多くの支援を要求する。
与えられた環境のもとで期待できる生産の質量には限度がある、と彼らは叫ぶ。
両側からの圧力で、メリメリという音が最高経営者のオフィスに伝わってくる。
彼とそのマネジメント・チームは上と下からの要求のバランスをとり、両方の側を公平に満足させなくてはならない。
いかなる企業においても、自由な情報の流れが必須とされる理由はそこにある。
というのは、経営者は自分の会社と市場の現実を知ることによってのみ、満足のいく経営をおこなうことを期待できるからである。
ビジネスの世界では、だれもが自己利益に根ざした正当な反対目的の板ばさみになって働いている。
顧客はより安い価格を、サプライヤーはより高い価格を、組合はより高い賃金を、株主はより多くの収益をそれぞれ要求する。
競争はより良質な製品をより低いコストで市場に送り出させようとする。
マネジャーの仕事はそれらすべてを按配し、さらに、そうした反対目的のみならず、自分自身と会社のために設定した目標をも満足させる結果を挙げてその年を終えることだ。
ビジネスには常時さまざまの問題があり、マネジャーの仕事はそれらを解決することである。
最悪の罠
成功によって平常心を失った創立者または経営責任者が、自分のよく知っている事業から、世界の経済とか、地域社会や州や国の社会学的問題への分担責任といった、ほとんど無知な高級な哲学へと、関心を移した時である。
彼は事業の経営責任をほかの人間に委譲し、自分はスピーチをしたり、地域社会の事業の音頭とりをしたり、外部の活動の主催者の仲間入りをしたりする。
外部での社会活動は彼に、事業に固執することからは得られない個人的自我の充足を与える。
これは成功したビジネスマンを陥れるために考案された最悪の罠のひとつである。
外部の出来事
時には個々の企業の力ではどうにもならない外部の出来事が、どんなに質の高い数字による早期警報システムをも無効にしてしまうことがある。
エネルギーコストの突然の高騰、相当規模の国際的事件、国の経済全般の景気後退への突入などは、どんなによく練られた計画をもぶちこわしにする力を持っている。
外部の出来事に足を引っぱられて、ほかにはどうしようもない場合、われわれはその会社が新しい環境に対応できるように、それを「再編成」した。
経済の変化が自分たちを助けてくれるのをただ待つことは、解決策として受けいれがたかった。
再編成にあたっては、会社の中で何がおこなわれているのかを知らせてくれる数字が大きな役割を果たした。
われわれはあらゆる業務活動に関するあらゆる数字を検討して、それが四○○○万ドルの売上げで利益を挙げていた規模まで縮小した。
かつては必要と見なされていたあれほど多くの支出が、非常時となると賛沢のように見えてくるかは、ただもう驚くばかりである。
キャッシュ
ビジネスにおいて修復不可能の失敗は、キャッシュが尽きてしまうことである。
それ以外なら、ほとんどどんな失敗でもなんとか回復の道がある。
しかし、キャッシュが尽きてしまったらゲームはそれで終わりだ。
報酬
ビジネスの世界ではだれもが二通りの通貨l金銭と経験lで報酬を支払われる。
金は後回しにして、まず経験を取れ。
「諸君がビジネスで成功したかったら、みずから選んだにせよ、めぐり合わせで身を置くようになったにせよ、自分が属する場所で上位20%のグループに入ることが必要だ」
昇給
大学を卒業する若い男女を比較的高い初任給で雇い、彼らがその会社にいいかげん長くいて、今さらよそへ行ってもうまく勤まりにくい、というふうになるまで昇給させ続ける会社がある。
それから昇給は緩慢になるか止まってしまい、よく見ると彼らは真の市場価値より低いところにとじこめられてしまっている。
これもまた、良い従業員を安く使うための一法である。
成功のノウハウ
基本的に、誰も経験していない成功のノウハウは、ほとんどありえないと思っている。
他企業や他産業にできたことは、我々にもできると信じている。
組織
会社の規模が大きくなると、ちょっとした失敗が致命傷になりかねない。
会社を潰さないために、目標と計画が全体に必要になる。
会社の仕組みや組織を一からつくり直さないといけないと切実に思った。
成長し続けていくには、会社の事業目的と経営理念を明らかにし、それに共鳴してくれる人材を集めることも重要になる。
仕事をするための組織と、社員と熱い情熱を語り、共有できる関係を築かなくては、組織は機能しない。
「組織図に含まれるすべての人びとを、共同一致して機能させ、何よりも肝要な、緊密な人間関係によって結束させた時に、初めて真の経営は始まる」
僕は、一億円の商売と一○億円の商売は違うし、一○○億円の商売もやり方が違ってくると思っている。
だから、経営トップが組織図を書くという作業をやり続けないと、組織は硬直化してしまう。
組織ができあがると、組織の論理が優先され、変化を求めず、安逸をむさぼろうとする。
それが楽だからだ。
これを打破するには、組織は仕事をするためにあり、組織のために仕事をするのではないということを決定的に知らしめる必要がある。
それは、絶えざる組織改革であり、現実に即した柔軟な人材の異動を行うことだ。
僕は、組織図は毎日でも変えたいと思っている。
事業はスポーツ
僕は、事業はスポーツに似ていると思う。
例えば、サッカーでいえば、監督はゴールの所在を告げ、ゴールにたどり着くためのルールと戦略を示し、選手の適性に合うポジションを割り振り、厳しい練習を重ねる。
しかし、状況が変化し続ける試合の最中に、「ここでキックしろ」と命令することはできない。
選手個々人が、与えられた戦略的知識を活かし、自分のポジションを考え、状況を把握して臨機応変に動く。
そこでは、自分は命令する人、僕は命令通りにやる人と言う関係は成立しない。
それでは、試合に負ける。
面白かったポイント
経営者必読の書です。
経営者はこうあるべしということが分かります。
柳井さんが最高の教科書と評することも分かります。
満足感を五段階評価
☆☆☆☆☆
目次
◆はじめに:「これが私の最高の教科書だ」 ~柳井 正
◆第一章:経営に関するセオリーG
◆第二章:経営の秘訣
◆第三章:経験と金銭的報酬
◆第四章:二つの組織
◆第五章:経営者の条件
◆第六章:リーダーシップ
◆第七章:エグゼクティブの机
◆第八章:最悪の病――エゴチスム
◆第九章:数字が意味するもの
◆第十章:買収と成長
◆第十一章:企業家精神
◆第十二章:取締役会
◆第十三章:気になること――結びとして
◆第十四章:やろう!